整形外科医のバイブルだから、最近の日本語の手術の本はAO法骨折治療の影響を強く受けすぎている。
上腕骨頸部骨折に対する展開の工夫でも書いたけど、教科書通りの展開ではロッキングプレートの固定には不十分な所が多々ある。
そして日本語の手術の本の多くは、関節面を合わせる必要があるAO分類Cでは肘頭を落とすアプローチを推奨している。(バイブルが強く推奨しているからね)
色々な考え方があると思うけど、普通の整形外科に取っては上腕骨遠位部骨折の手術ってのは頻繁にあるものではないので、色々なアプローチを習得することは無理があるんだよ。
1,肘頭骨切りアプローチ
2,上腕三頭筋縦切アプローチ
3,上腕三頭筋を皮弁として反転するアプローチ
俺は2の上腕三頭筋縦切アプローチだけで全部の上腕骨遠位部骨折に対応できると思っている。
肘頭骨切りアプローチも何度もやってるけど、プレートを設置する部分の展開が不十分になる。



尺骨神経を剥離してKワイヤーによる仮止めやプレート固定の前までの展開が10分で出来る。
そして肘を屈曲すれば、関節面の前面まで見ることが出来る。


上腕三頭筋縦切アプローチの注意するところは2点のみ。
尺骨神経を神経テープで持ち上げながら電気メスで展開すること。
肘頭を最後に縫合しやすいように展開すること。 https://www.youtube.com/embed/yW_eWR7I5nY
術後10日でこんな感じ。
場末病院じゃ、上腕骨遠位部骨折の手術適応になる症例なんか年に1回あるかないか。
肘頭なんか落としてられないよ。
ほら、CAMPBELLには上腕三頭筋縦切アプローチが乗ってる。
ここまで開けてinstabilityは出ない。
俺はこの手の問題を「ママの言ったとおりしてたんでは幸せになれないの」問題と思っている。
「ゆるい子ちゃん、結婚するまで男の人とそういう関係になってはいけませんよ」
「今の時代、ママの言ったとおりしてたんでは幸せになれないの」
娘の幸せを誰より願っている母親が、嘘言うわけないんだけど。
言われた通りしても幸せになれるとは限らない。
それがシンセスとAOの関係性だと思ううよ。
もう一つの整形外科医なら絶対に持っているこの本も肘頭骨きりアプローチ。
縦切アプローチをやる先生がすくないわけだよ。
若い先生がこのアプローチを使って上腕骨遠位部骨折をやるなら、尺骨神経の前方移行術が自信持ってやれるレベルが最低限だよ。
俺も一つの皮切でもやれると思うけど、いつも怖いから尺骨神経を同定するためにもう一つの皮切を利用しているから。
年に1回あるかないかのアプローチだからね。
もう一つの皮切を利用しても前方移行術と比べられないぐらい尺骨神経は同定しづらい場合があるよ。
骨折のために腫脹しているから。
青で丸をつけた尺側の展開が難しい。
慣れない間は慎重にやったほうが良いかも。
俺は電メスで一気にやっちゃうけど。
それと黄色で丸をつけたところがこのアプローチのキモなんだけど、ここを十分剥離しないと関節前面までは見れないよ。
前回も書いたけど、シッカリ縫合出来るように直線的に展開しないと駄目だよ。
整形外科医に取っては肘頭骨折は絶対に手術適応だと習ったんだけど。
でも手術拒否する患者のフォローアップ。テンションバンドワイヤリングで転位してしまった症例などをフォローアップしてみると、意外と肘頭骨折は転位したままでも大丈夫なんだよね。
伸展機能が障害されないの。
(重力が関係している部分はあるけど)
ここまで展開して大丈夫かと思うだろうけど、上腕三頭筋縦切アプローチで肘頭と剥離した部分は癒着する方向に力が働くのか思っている以上に可動域が回復するの。
ここまでの展開が10分は誇張じゃないよ。
その後、Kワイヤーでの仮固定などを経てロッキングプレートでの固定になるんだけど、他の部位でロッキングプレートに慣れていても、上腕骨遠位部骨折のロッキングプレートは思っている以上に難しいし、時間が掛るよ。
逆に言うと、ここまで10分で展開しないとワンターニケットで終わらない。
その後はターニケットオフにして止血しながら縫合するのがいつものパターン。
AO分類のCで1時間半ぐらいで終わる。
上腕三頭筋縦切アプローチをやってみたい先生は参考にしてください。
僕は医者一人でやってますよ。
おわり。